河川の護岸工事で、最近になって川岸に土を残した「ほたる工事」や、ブロックの一部に土を詰めた「ほたるブロック」が登場してきた。

河川の水も、以前に比べると汚染が少なくなっているから、人家の少ない静かな場所では、少しずつホタルの光もよみがえるかもしれない。

ホタルの話を中心にしてきたが、細かな事情は異なっていてもトンボもだいたい似たような経過で、都市部から姿を消し、一時期多用されたPCP(ヤゴの餌になる魚が死ぬ)や、残留性の強い殺虫剤BHC(昭和四六年に規制された)などの影響で、郊外でも数が減ったようだ。

この十数年で、地方都市だけでなく、小さな町や村でも下水道の整備が進み、衛生環境が著しく改善された。

そのため、トンボの餌になるハエやカが激減したことも、大きな原因といえるだろう。


天然の農薬

83年に、天然化学物質に関する試験データを発表する少し前あたりから、エイムズ博士は考え方を変えたこともあり、エイムズ博士に対しては、「企業の御用学者に変節したのか」という抗議の声も起こった。

学者の間からは、「考えられる発ガン危険性のランキング作成の基準が適切ではなく、不正確だ」との声も出ている。

これらの議論は、一年や二年では、とても決着がつくようなものではない。

興味のある方は、是非注目していてもらいたいが、誌上討論はきわめて専門的で適当な翻訳がないのが残念なところだ。

エイムズ博士は、論争の中で、「人間が摂取する植物中の発ガン物質のうち、天然化学物質の割合が極めて高い」と指摘している。

それらを、昆虫や菌類などの病害虫から身を守ため、植物自身が生産した「天然の農薬」であると表現している。



「発ガン性試験が、民間の研究機関でもある程度ちゃんとできるようになったのは、50年代じゃなく、60年代に入ってからですよ。

つまり、大変残念なことだが、当時は詳しいことを調べる方法がなかった。

関係者がサボっていたのなら問題ですが、わからなかったわけです。

広く使われ始めたのが大体50年前。

それでだいぶあとから、いろいろ問題があるとわかって、使うのをやめて20年近くたっている。

今、農薬の問題を議論する時に、DDTを引き合いに出すというのは、ちょっとおかしいと思います」

しかしそれでは、30年後、50年後に、1990年あたりをふり返って、"よくこんなキケンな農薬を使っていたもんだ"と言われる可能性もあるわけですね。




農薬は自然の生態系を変える

トンボやホタルが少なくなった原因。

日本の農業は、農薬が過剰に散布されており、クスリ漬けになってを使っても、病害虫による被害は減らないし、収穫もあまり増えない。

農薬を使わなくてもおいしい作物を作ることができる。

ゴルフ場の農薬は野放し。

農薬が危険物質であるという前提の上で、直接取り扱う農作食べる消費者、環境に悪影響を及ぼすというもの。

農薬は毒であるか?

「農薬は虫を殺したり、草を枯らすから、人間の身体にも有害である」

この文章を読んだ人の大部分は、「そりゃそうだ」と思うに違いない。

しかし、薬学や毒性学などの専門家ならば、「何でそうなるの」と、?マークを2つも3つも打つかもしれない。

多くの人は、たぶんこう考えるはずだ。

「農薬(この場合は、『殺虫剤』と正確に言う必要がある)は、生き物である虫を殺す。だから同じように生き物である人間にも有害なはずだ」


農家一戸当たりの耕作面積が狭いーこれが、日本の農業の最大の弱点である。

政府による基盤整備の推進や、離農者の増加も要因となって、経営規模の大きな農家も増えてはいる。

しかし、その反面、0.5ha未満という小規模農家がまだ40%も占めている(北海道を除いた地域)のが実状だ。

このため、農家一戸当たりの耕地面積は、全国平均で1.2haしかない。

ところが、北海道の場合、明治以降に開拓されたという背景から、経営規模が大きく、一戸当たり耕地面積は、全国平均の十倍近い11.3haに達している。

その北海道の中でも、とくに経営規模が大きいのが、十勝地方である。

87年の統計によると、総農家数10670戸に対して、5720戸と、半分以上が20ha以上の耕地をもっており、平均面積も24.3haと、全道平均の2倍以上だ。

専業農家率も高く72%。

これは全道平均の1.5倍である。

経営規模では、ヨーロッパなみの水準といわれている。


ネギ作りの苦労は植え付け

山武郡成東の○○さんは、ネギを50haと水稲を97ha耕作している専業農家で、代々この地域の地主であったが、現在は奥さんと二人で農業をやっている。

ネギ作りの苦労は植え付けだ。

「ネギは、4万から4万5千本植え付けますが、その作業だけでも大変ですよ。最近は機械でやるから前から比べるとだいぶ楽になったけれどもね。だけど4万本以上植えて収穫できるのは3万本くらいしかない。例年3割方は減るのを見込んでいます。だから虫や病気が発生したら大変だよ」

出荷調整も大変な作業のようで、奥さんがていねいにネギの根っこを切り、泥もきれいに落としていた。

「消費者は、こうしないとなかなか買ってくれないので」と汗をふきながら答えてくれた。

「良いものを作ろうと思えば農薬をまかなければできないよ。殺虫剤や殺菌剤を、1年間に15回くらいまくかなあ」

とくにネギの小さいうちに虫に食われてしまうと商品にならないそうである。

「健康のことを考えてマスクをつけるようになったけれども、農薬を使わないと商品価値のあるものはできないよ」



大阪市春日出に、1988年に完成した〇〇化学の安全性研究所は、動物が病気にならないような管理された施設。

安全性研究所主任研究員は、「よく"動物御殿"なんて言われますよ」と笑う。

確かに、そう表現してもおかしくないだけの設備だ(もっとも、試験に供される動物たちにとっては、刑務所のようなものだろうが......)。

ラット、マウス、ウサギなどの小動物から、イヌやサルなどの大型動物まで、全部で二万匹を飼育できるが、まだその半分まで達していないそうだ。

ちなみに、これら実験動物の値段は、ラットで一匹1500円、マウスで500円程度だという。




合成法のコストダウンによって、8%粒剤で商品化することが可能になった。

穂いもち病の予防に抜群の効果をもつ、この化合物が製剤開発に結びついたことを喜んでいたわけだ。

慢性毒性などの試験と並行して、本社サイドも企業化準備に入った。

実際に製剤を販売する製剤メーカーとの共同研究も開始された。

慢性毒性試験の中間検査(実施期間104週の52週目)のデータでは全く異常がみられず、社内の期待はいよいよ高まる。

第一農薬事業部開発部長さんは、他の事業部幹部と一緒に、売り上げ計画の作成に入っていた。

まだ申請手続きすら取っていないとはいえ、工場で新たな設備を作ったり、生産に備えるのだから、社内で市場性の予測や、ある程度の見込みをつけることは当然だ。

業界関係者の集まりなどで、ウワサを聞いた他社の人から「いい剤が出るらしいね」などと言われて、「まだわかりませんよ」と笑いながら心の中ではソロバンをはじいていたのである。



慢性毒性、発ガン性試験は、ラットについては併合が可能なことは、前に書いた通りで、そのほかに、それぞれもう一種類ずつ、同じ試験が必要で、全てが終了するのには3年以上かかる。

終了後、全動物を解剖し、一匹につき30~50枚の標本を作って顕微鏡で検査する。

なお、慢性毒性試験によって、「実験動物に一生涯にわたって毎日摂取させても何ら悪い影響が出ない最大の量」が得られる。

これを最大無作用量(NOEL)と呼び、農薬残留基準を決めるさいの指標にする。

ここまでみてきた試験項目が全てクリアーされたとすれば、取りあえず私達自身については、農薬が原因で病気になったり、死んだりすることはない。

しかし、もう一つの大事な子孫への問題が残っている。


新しい化合物でどういう効果があるかを、実際に雑草や害虫を使って調べるわけだ。

除草剤の例でいうと、土を入れた小さなポットに、3~5種の雑草を植えたものに、薬剤をかけて、その結果をみる。

除草剤といっても、上から葉にかける茎葉処理型もあれば、土にまいて根から吸収させて枯らす土壌処理タイプもある。

これらと水田用の3種類の処理方法で、薬剤の濃度を、濃い目、中位、薄目の3つ作って試験する。

陸上選手でも、短距離に向く人とマラソンに向く人がいるように、農薬にもすぐに効果の出るタイプの薬剤と、ジワジワ効いてくるタイプがある。

それぞれのポットの様子を、1週間から2週間、毎日観察し続けて、次の段階に進めるかどうかを判断する。

残留農薬検査




同じ成分でも農薬と防疫用では管轄が違うところで、農薬取締法では、農薬の定義を次のように定めている。

「農薬とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下『農作物等』という)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルスの防除 に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう」

つまり、「殺虫剤」といっても、田んぼや畑の害虫を殺す目的で使う時には農薬の一つだが、家の中のハエやカを殺すのに使うものは、防疫用殺虫剤であって、たとえ同じ成分でも農薬ではない。

こちらの方は、厚生省の管轄となる。

 1987年の夏、北海道にアワヨトウという虫が異常発生したことがある。

昼間は株元や葉の裏にひそんで、夜になると作物を食い荒すことから、"夜盗虫"の字があてられている虫で、第一世代と第四世代は麦や芝、牧草に、第二、第三世代はイネに害を与える。

残留農薬検査



田んぼの雑草を全部除くには

わかりやすく区切りの良い数字で説明しよう。

ある田んぼの雑草を全部除くには、除草剤が1キロ必要だとする。

だけど、500グラムまけば、雑草の80%を除くことができて、残った20%の雑草の影響で、コメの収穫が減る分が5%だったと仮定する。

そういうことになると、農薬の使用量を2倍にしても、収穫は5%しか増えないことになってあまり効率が良いとはいえなくなる。

それなら、農薬は半分でいいということになるわけだ。

病気や虫の被害についても似たようなことがあてはまるから、農水省や各県の農業技術の研究期間で、そういう研究が進められているようだ。

「そんなことは昔からわかっていたことだろう」と言ってはいけない。

日本の食糧不足が完全に解消されたのは、そんなに古いことではない。

20代後半以上の人なら、小学生ぐらいの時、「お百姓さんが一生懸命作ってくれたコメを残してはいけない」と親や教師に説された記憶をもっているだろう。

その頃は、「5%減るぐらいは」なんて言える時代ではなかったのだ。

残留農薬検査
ホタルに限らず、多くの水棲昆虫は、油や洗剤などさまざまな物質が混じった生活排水などの物質の影響を受けやすい。

毒性の問題もさることながら、洗剤などの界面活性剤が流れ込むと、水面の表面張力が変わる。

それだけでアメンボやミズスマシが水面での浮力を失って、そこでは生きられなくなったりもしたようだ。

油が水面に膜を張ると、それが水棲昆虫の体の気門(呼吸をする孔)をふさいで窒息死させてしまう。

江戸時代から終戦直後まで続いた「注油法」は、この原理を応用したものにほかならない。

また、昭和30年代には、魚介類に対しても毒性の強いPCPが水田や果樹園などで使われ、それが河川に流れ込んでさまざまな生物を殺してしまったのも事実だ。




残留農薬検査
残留性や発ガン性が問題になって、使用禁止にされた合成化学物質農薬よりも、一日一個のマッシュルームを食べる方が、はるかに発ガンの危険が大きいというわけだ。

衝撃的でないはずがない。

しかも、この論文の発表者が、カリフォルニア大学のB・エイムズ博士(と二人の共同研究者)だったことで話題はさらに大きくなった。

エイムズ博士は、サルモネラ菌を使って、わずか三日程度で化学物質の変異原性を調べられる「エイムズ・テスト」の考案者であり、発ガン物質の研究者としては、世界で最も良く知られているうちの一人だ。

しかも、1971年には、「たった一個の突然変異分子でも、動物に突然変異を起こすことができる。

残留農薬検査
農家一戸当たりの耕作面積が狭いーこれが、日本の農業の最大の弱点である。

政府による基盤整備の推進や、離農者の増加も要因となって、本ブログで紹介している方々のように経営規模の大きな農家も増えてはいる。

しかし、その反面、0.5ha未満という小規模農家がまだ40%も占めている(北海道を除いた地域)のが実状だ。

このため、農家一戸当たりの耕地面積は、全国平均で1.2haしかない。

ところが、北海道の場合、明治以降に開拓されたという背景から、経営規模が大きく、一戸当たり耕地面積は、全国平均の十倍近い11.3haに達している。

その北海道の中でも、とくに経営規模が大きいのが、十勝地方である。

87年の統計によると、総農家数10670戸に対して、5720戸と、半分以上が20ha以上の耕地をもっており、平均面積も24.3haと、全道平均の2倍以上だ。

専業農家率も高く72%。

これは全道平均の1.5倍である。

経営規模では、ヨーロッパなみの水準といわれている。

農業粗生産額は、4年連続して2千億円を超え、北海道全体の20%を占めている。

水田はほとんどなく、主要作物は小麦、ばれいしょ、てん菜、豆類で、いずれも生産高は全道一だ。

ほかに、酪農も盛んで、乳用牛、肉用牛とも飼養頭数はやはり全道一位。

これら畜産が農業粗生産の40%強を占めている。

日高山脈と大雪山系を背に、太平洋に面したこの地方は、夏は比較的温暖だが、冬の寒さは厳しい。

サケの遡上で有名な十勝川流域には、十勝平野が広がる。

ワインの里・池田町や、今は廃線になった広尾線の愛国駅、幸福駅など、全国に知られる観光地も多い。

しかし、この広大な十勝平野は、約80%が火山灰地であり、土壌条件は決して良いものではない。

今日の、一大農業地帯を作りあげたのは、土地の改良を続け、寒冷地農業に挑んだ先人達の、血のにじむ労苦に負うところが大きいという。

残留農薬検査
ニトロソアミンと、タバコに関するかなりの部分は、黒木登志夫著『がん細胞の誕生』(朝日選書)を参考にした。

この本の中に、非常に示唆に富んだ表現があるので、その部分を引用しておこう。

研究が進むにつれて、ひと口に発がん物質といっても、ピンからキリまでさまざまであることが分かってきた。

食物に混ぜて食べさせたとき、半数の動物にがんを作る量は、マイクログラムからグラムまで100万倍の間に散らばっている。

つまり、同じ発がん物質といっても、大悪玉もいれば、中悪玉、小悪玉もいる。

中には悪玉なのか善玉なのか区別がつけにくいものもある。

"恐れるべきを恐れず、恐れざるべきを恐れる"ことにならないよう、今こそ、発がん物質を評価する新しい道を探るときであると思う。

食品添加物に厳しい目を向ける消費者運動の人たちがタバコを吸っているのでは何にもならない。

ビタミンCは抑制効果が強いといい、タバコを吸う人の唾液や胃液に多く含まれるチオシアン酸イオンは、促進作用をもつという。

タバコがここでもワルサをしている。

タバコとガンの関係について、これを否定する学者は、もうほとんどいない。

エイムズ博士のリスクランキングでは、危険度1万2千とされているし、ランキングについて反論している学者たちも、タバコの発ガン性は認めている。

キリスト教の宗派の一つモルモン教徒は、全米平均に比べてガンが少ない。

非常に厳しい生活習慣を守っていて、飲酒、喫煙、コーヒー、お茶を禁じているためと推定されている。

ガン全部の死亡率は全米平均の75%、口腔、咽喉、肺、食道など、喫煙と関係あるとされているガンに限ると、何と全米平均の45%、半分以下ということだ。

残留農薬検査
猛毒物質の代表格のようにいわれる青酸カリ(シアン化カリウム)は、0.2㎎で人を殺せるが、金属の精錬やめっきなどに用いる限りは有用な物質である。

薬にだって同じようなことがいえる。

便通の良い人にとって、便泌薬は下痢を誘発させる代物でしかない。

他にもまだある。

睡眠薬は、不眠症の人にとっては薬だが、一定量を越えると死んでしまう。

血圧降下剤も、高血圧の人には薬だが、低血圧の人には毒でしかない。

「医者のサジ加減」とは良く言ったものだ。

ところで、もう一度、質の話に戻ろう。

虫も草も、そして人間も、地球上の生物という枠でとらえれば同じような生き物だ。

しかし、どういう生物かと考えれば、これは全く別な生き物である。

必要とする栄養もエネルギー源も違うし、生まれてから死ぬまでの生理作用もまるで違う。

毒性学の始祖ともいわれるパラケルスス(1493~1541)は、「すべての物質が有害である。有毒でない物質はなく、用量によって毒であるか薬であるかが決まる」という言葉を残している。

500年近くも昔の言葉だが、今も毒性学の専門家にとっての常識として生きている。

「有毒でない物質はない。有毒でない利用法があるだけである」という言葉もある。

使用する量を誤まらず、使用方法を正しくすれば役立つものが、量と使い方を変えると毒になる。

そんな例は、私達の身の回りにも実に多い。

「酒は百薬の長」といわれるのは、毎晩一合程度の晩酌ぐらいの場合を指しているのであって、一升酒を飲むような人には当てはまらない。

残留農薬検査
それだけに生産物の品質には気を使って作っているそうで、「ハチを放す時期は殺虫剤が使えなくなるので、開花前に十日に一度くらいはまいている」そうだ。

また、イチゴの大敵であるウドンコ病や灰色かび病が出たら、被害果は捨てるほかはないそうで、「ハウスの中だから病気のまん延も早いんです。一度出たらそのハウスの収穫はもう駄目だね」

被害を未然に防ぎ、収穫を確保するためには、農薬の散布はかかせないということだ。

「無農薬では、ハウスイチゴは絶対といっていいほどできないよ」

成東の実川さんは、ハウスイチゴを20haと稲を80a作っている。

山辺さんと同様に奥さんと二人で農作業をやっている。

「ハウスイチゴは10年くらい前から始めたが、二人ではこれくらいの規模でちょうどいいところです」。

やはり作業が大変なために、規模も制約されるようだ。

「稲は農協の方でもいろいろ手伝ってくれるので、そんなに手間はかからない。だけどイチゴはそういうわけにはいかない。病気や虫も発生するし、受粉のためにハチの管理までしなければならないからね」

実川さんは、イチゴの品評会で、県知事賞をもらっている。

残留農薬検査
侵入してくるウンカは、長距離飛行向きの長翅型だが、これが卵を生んで生まれる次の世代は、翅が発達しない短翅型になってしまう。

長翅型と短翅型では全然形態が違うので、昔は、別種と考えられていたが、同一種の中で、発生密度の低い時には短翅型、密度が高く(つまりエサが足りなくなりそうに)なってくると、今度は長翅型が生まれるようになり、次の繁殖場所へとまた大移動することがわかった。

だんだんいろいろなことが判明してきたのだが、まだまだ解明しなければならないことも多い。

中国大陸のどこから来るのか、海を飛び越えるエネルギーは何かーなど、未知のことがたくさんあるのだ、という。

さて、"ウンカの基礎知識"はこれぐらいにして、話を進めよう。

もっとも、散布暦ができたからといって、病害虫防除が一気に効果をあげたわけではない。

大正八年から三年間の作況指数は、60、83、79である。

風害など気象の克服とともに、病気や虫の害をいかにして防いでいくかは、農業にとって、昔も今も変わらない課題だ。

今来さんは、18歳で就農して以来、40年以上もりんご作りに従事してきた大ベテランである。

「農薬がなかった昔は、虫が出ると大変だった。

シャクトリムシが出ると、葉が全部喰われてしまってな。

そうすると、ホントは翌年に出るはずの葉が芽を出すから、次の年も葉が足りないから花がつかず、(収穫が)ダメになってしまう。

葉を喰われたために、10月や11月に花が咲いちまうこともあったな」

残留農薬検査
モニリア病や、現在もなお重要な病害とされている腐らん病、あるいはワタムシやハマキムシなどが大発生し、大きな被害をもたらしたという。

こうした病害虫を防除するための農薬は、明治時代後半から、いくつかの種類が流通していたが、効果も不十分だし、有効な使用法などは十分に解明されていなかったから、当時の関係者達は、失敗を繰り返しながら、手さぐりでいろいろな試みを行っていた。

大正七年に、青森県内務部は、『華果園病害虫防除暦』を発行した。

これは『華果園病害虫予防駆除剤』という、今でいえば、農薬のカタログのような冊子の付録として印刷され
たもので、これが、日本で最初に作られた農薬散布暦だった。

それによると、薬剤散布は年5回で、石灰硫黄合剤、ボルドー液などの散布時期や量が指示されている。

農業の高度化 その2

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農政の政策目標として経営感覚に優れた農家の育成というのがあるが、実は、日本の農家は経営感覚に優れた農家が多いのではないか。

そうでなければ、これだけ狭い国土で斜面が多く、山と谷と川に細分された狭い農地という悪条件下で七二%という金額ベースの自給率を維持できはしない。

日本経済が長期不況に陥り、失業率が戦後最悪の状態を続けるに従って、雇用対策としてワークシェアリングの議論が活発になってきた。

厚生労働省もワークシェアリングの導入促進を真剣に検討している。

大企業の中にも、賃金を抑制する見返りに、従業員のアルバイトを認める動きも出てきた。

残留農薬検査
特に労賃の高い国においては、発展途上国など労賃の低い国の製品と競争するため、より高度な製品の開発を進めて、収益の改善を図る。

それが産業の高度化である。

農業においてもしかりである。

農産物の高付加価値化を進めて、高い労賃や高い土地代などの悪条件を克服しながら、国内の他の産地や輸入農産物との競争に勝ち抜き、貯蓄を増やして行く。

それが農業の高度化でもある。

そう考えれば、金額ベースの自給率の高さは、日本の農業は経営感覚に優れた農家によりグローバル化という厳しい国際化の波の中で、実にうまく健闘し、時代の環境に適応しているとも言える。

「考えない」層

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空腹を満足させるだけの夕食。

母親の帰宅が遅く子供だけの夕食。

そうした子供が大人になり、子供を持つに至っている。

このため栄養面から自らの健康問題など考えない家族が増えている。

それを「考えない」層と切り捨てて良いのだろうか。

2000年3月に文部省と農水省が決定した食生活指針の内容を批判するつもりはないが、それが国民に浸透、普及しない要因、社会的背景を考えるべきだ。

指針は立派な内容だが、いかに立派な内容でも国民に浸透しないのなら価値は半減する。

食を考える国民会議が設定しているインターネット上の「el食生活ドットCOm」のサイトは、当然のことながら、これを見る関心層を対象としている。

しかし農水省はもっと幅広い、栄養に関心を持つほどの余裕もない人達の食料問題を考える必要がある。

そうでなければ現在の趨勢を変えることなどできはしない。

残留農薬検査
そして2004年度の目標として、グリーンツーリズム人口一二〇〇万~一四〇〇万人、市民農園の整備一八万区画、三大都市圏の農業粗生産額の全国シェア(市場占有率)六%の維持としている。

そして2001年度の目標として、グリーンツーリズム人口九六〇万~一一〇〇万人、市民農園一四・六万区画、三大都市圏のシェア六%と設定した。

さて、結果はどうなったか。

まず、グリーンツーリズム人口だが、農家民宿の宿泊者数をアンケート調査したところ前年と同水準の九〇〇万~一〇〇〇万人となった。

不況の影響で伸び悩んだようだ。

市民農園は一四.二万区画にとどまった。

都市と農村の交流政策は、食料市場のニーズを察知するため、都市住民の考えを理解するために必要だけでなく、都市住民の農村への到来で経済活性化を図り、さらに農業に対する理解を得るうえで重要である。

農村と農業は都市住民にとって、単に食料の供給源であるばかりでなく、自然と親しむ憩いの場所であり、水資源などの供給地域でもある。

そして農村の住民は都市住民と財政を通じてもつながっている。

都市住民の理解と協力が農政の展開にも重要である。

そこで農水省では都市と農村の交流促進を政策として掲げ、その政策評価の手段としてグリーンツーリズム人口の増大テンポと、市民農園の整備状況、さらに都市及び都市周辺の地域における農業振興をあげている。

残留農薬検査
そして、五ヵ年計画の2004年度には、作付け面積五〇八万ヘクタール
最終目標の2010年度には、同五三二万ヘクタール
生産量は、2004年度一三八七万トン
ニ〇10年度一四九八万トンと設定している。

さて、2001年度の結果はどうであったか。

作付け面積は四七九万ヘクタール、生産量は一三七四万トンであった。

作付け面積、生産量とも、目標を大きく下回っている。

というよりも生産量こそ趨勢値を上回っているものの、作付け面積は趨勢値をも下回っている。

これは明らかに、農水省が過去の統計から想定した趨勢をも上回る要因が加わっているからだろう。

その要因は、農家の高齢化による野菜耕作(野菜は重く、腰に負担のかかる農作業が多く、高齢者には特に負担がかかる)の減少と、輸入攻勢と考えられる。

五ヵ年計画 その1

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すでにレタスなどの生鮮野菜を中国から大量に輸入しようとしている動きが日本の商社の間で強まっている。

これが表面化するのも時間の問題だ。

また、需要面でも緑黄色野菜の消費は増えているものの、主力の白菜、大根など重量野菜の消費が減少し、全体としても需要減となっている。

この結果、需要減と輸入攻勢という両面から生産量はここ数年減退し、2000年度は一三七二万トンに、自給率も八二%にまで低下している。

そこで政策目標としては、作付け面積と生産量の減少傾向に歯止めをかけ、さらに増産に転じさせようとしている。

具体的には、2001年度の作付け面積を五〇〇万ヘクタール(減少傾向の趨勢値四八二万ヘクタール)、生産量を二二八八万トン(同上二一一六四万トン)としていた。

残留農薬検査

企画評価課は、これらの政策評価報告書と政策シートについて、評価方法に客観性が確保されているか、評価結果が妥当かどうかなどを審査しながら、目標に対する達成度合に応じてランク分けし、有効性と必要性の両方向から各政策を評価して行く。

ランク分けに関しては、達成度合九〇%以上を、「A」(概ね有効)

そして、そこでは政策分野ごとの評価に加えて、一八〇にのぼる政策手段別の評価も行い、二二の政策手段を「廃止」すべきと評価した。

ただし、その評価手法はまだまだ農水省官僚の感覚でしかなく、消費者や生産者の意見を反映させた評価には距離があり、今後改良の余地が大いにある。

最初の年度(2000年度)は政策分野を七九とした。

そして、2001年度はこれを見直して七〇とした。

この政策分野を主に担当する主管課は、この評価シートに従って、その政策の目標、その目標達成度を計測するための実績値と目標値、ならびに実現した目標達成度の要因分析などを記入して、まずは各局、各庁の政策評価担当課に提出する。

これらの担当課は、提出された政策シートについて、実績値の把握方法が妥当か、分析などのコメントが妥当かなどを審査しながら、各庁、各局としての政策評価報告書を作成し、これを大臣官房の企画評価課に提出する。

それは食料の貿易自由化という時代要請に対して、規模拡大、生産性の向上といった繰り返し言い続けてきた農政では限界があるという現実に目覚めることである。

現実を軽視した農政に説得力はない。

まして欺隔と粉飾で説明される政策に誰も耳を傾けない。

今回の事件を契機に、農水省は従来の農政を見直し、消費者の信頼を得られる農政に大改革する必要がある。

事態を重く見た全国農業協同組合中央会(全中)は「消費者から信頼され、生産者の負託に応える経済事業の刷新に関する委員会」を設置し、それに消費者、学者、学識経験者の代表を加えて農協の意識改革に取り組んでいる。

生産者団体組織である全農までもが、ニセ表示犯罪に加わっていた事実は極めて重いと言わざるを得ない。

農水省も事態を重視して厳しい行政指導に乗り出している。

しかし、全農も流通業者の中で商売をしている団体であり、競争に打ち勝つ責務を担っている。

ニセ表示が横行し、その中で利益をあげ、競争に勝ち抜くために手を染めざるを得なかった側面も、農水省は厳粛に認めるべきである。

そのうえで、生産者団体として、国民の理解が得られる対策を実施すべきである。

現実が提起した厳しい問題に目を背け、建前の対策に終始したのでは解決策は見つからない。

机上の空論に近い、見栄えだけの対策に終わってしまう。

すなわち,1985年9月のレーガン大統領演説以来,米国は貿易政策をより攻撃的に変えた。

従来の陳情を待っての301条調査開始では生ぬるいとして,通商代表自らのイニシアチブに基づく同調査の開始に踏み切ったのをはじめ,ガット提訴をより積極的に利用するようになった。

米国のガット提訴は1980年代に急増しているが,その大半は1985年以降の提訴である。

米国の攻撃の矢面に立ったのは,第1にEC,続いて日本,カナダ等である。

わが国では,日本ばかりが米国に叩かれているかのような印象が一般に強いと思われるが,実のところ,米国に最も叩かれてきたのはECである。

米国のガット提訴増の2つ目の重要な要因は,実は301条調査手続と密接に関係している。

ガットの紛争処理手続を最も活発に利用してきたのは,米国とECである。

 まず最初に米国について注目すべき点は,一方的制裁措置やガット無視の行動によって「ガット離れ」を進めているといわれる米国が,実はこれまで最もひんぽんにガットの紛争処理手続を活用してきた事実である。

1948年から89年までの間にあった総計約140件の紛争案件のうち,約3割の45件は米国の提訴によるものである。

1980年代から90年代初めにかけてガット提訴件数は急増しているが,この時代だけをとってみても,提訴数の一番多いのは米国である(80年代の米国の提訴数は23件,2位のECは21件,続いてカナダの20件)。

米国のガット提訴の多さは,1つには,ガットを戦略的に使うという米政府の政策判断を反映している。

上記の文言を交渉上の目的として設定した上で,交渉の手順が1987年1月28日に他のすべての交渉グループとともに決定された。

まずガットの紛争処理プロセスの機能について参加各国が分析し問題点を交渉グループに提出する。

これを審議するなかで交渉が適切と思われる問題点を明らかにし,次に交渉の対象として適切と判断された問題点について参加国は具体的な提案を提出することとなった。

こうして提出された提案をべ一スに実質的な交渉に入っていったのである。

2 「中間レビュー」(Mid-term Review)
交渉開始期における議論では,ガットの紛争処理メカニズムは迅速化を要するものの比較的うまく機能しており,急激な改革は必要ではないという点で一71マv干月yJ:「肥枕倣同駈vノ」出I!魯曾ノ応の合意が存在した。


1 プンタ・デル・エステ宣言
紛争処理の問題が新ラウンドの交渉項目になることはすでに準備委員会における議論のなかで明確になりつつあったが,正式に交渉項目として認知されたのは,1986年9月15日から20日にかけて開催されたガット締約国団特別総会において採択された閣僚宣言の第1部によってである。

同宣言は紛争処理について以下のように規定した。

「すべての締約国の利益になるように紛争の迅速,実効的な解決を確保するために,交渉は紛争処理プロセスのルールと手続きを改善,強化することをめざすべきである。

その際,より実効的で履行可能なガットのルールや規律が果たすことであろう貢献も認める。

本件交渉は採択された勧告を遵守しやすくするような手続きを監督,監視するための適切な方策についてその可能性を模索することも含むものとする。」

関税化の目的は,不法不合理な保護手段を合法的合理的な保護手段に変えて,ガットの原則を守るとともに制度改善に役立てることです。

ちなみに,国際収支の赤字対策としては,マクロの経済政策の改善,とくに財政赤字の削減が最も重要であることがガットでも認識されています。

為替レート,公定歩合および経済・社会の構造改革も関係が深いでしょう。

ガット交渉で行なわれる個々の産業または産品の市場開放,すなわちミクロの対策は,その範囲にもよりますが,効果が限られています。

しかし,その積み重ねが一歩一歩貿易自由化を進め世界経済を活性化してきたのです。

ガット第12条は,国際収支の赤字に悩む国が輸入全般に課徴金または数量制限を一時的に課すことを認めています。